「やっぱり、自分の考えは正しかった」
SNSやニュースを見て、そう感じることはありませんか。一方で、自分の考えと合わない情報には「本当かな?」と疑いの目を向ける。そんな読み方に、心当たりがある人もいるでしょう。
ここで考えたいのが、「ニュースの真偽を見抜く力」と「普段どんな情報を選んでいるか」は、同じではないということです。情報を慎重に判断できる人でも、自分が支持する側に都合のよいニュースには、引き寄せられるかもしれません。
この記事では、米国の政治ニュースと年齢・支持政党への思い入れの関係を調べた研究を手がかりに、自分のニュースの読み方を振り返ります。
この記事でわかること
- ニュースを見抜く力と、実際に触れる情報の「ずれ」
- 「明らかな嘘」と「極端に偏ったニュース」の違い
- 自分に都合のよい情報を、共有する前に確認したい3つのこと
ニュースを見抜ける人も、偏った情報に触れる?
「見抜く力」だけでは説明できないずれ
2024年に学術誌『Public Opinion Quarterly』に掲載された研究では、米国の3つの全国代表サンプル、計9,944人の調査と、オンライン上の行動記録を組み合わせて分析しました。
研究の出発点には、先行研究で示されていた次のような、一見矛盾する傾向があります。
| 調べる場面 | 米国の高齢者について報告されていた傾向 |
|---|---|
| 調査でニュースの真偽を判断する | 若い世代より劣るとは限らず、優れている場合もある |
| 実際のオンライン行動を調べる | 若い世代より疑わしいニュースサイトを訪問・共有することが多い |
つまり、「疑わしいニュースに触れるのは、嘘を見抜けないから」という説明だけでは、このずれを十分に説明できません。
そこで著者らは、デジタル知識だけでなく、政治への関心や支持政党への思い入れから、このずれを検討しました。出典:Lyonsら(2024)の論文要旨
「読むこと」と「信じること」も分けて考える
まなぶくん嘘を見抜けるなら、読むニュースも自然に偏らなくなると思っていたよ。



『正確かどうかを判断すること』と『何を読みたいと思うか』は分けて考えたいね。それに、サイトを見たからといって、内容を信じたとは限らないよ。
たとえば、SNSで話題になっている記事を、内容を確かめるために開くこともあるでしょう。閲覧記録だけでは、その人が賛成したのか、疑いながら読んだのかまではわかりません。
「明らかな嘘」だけに注意すればよいわけではない
情報の偏りは、事実と異なることを書く場合だけに生まれるわけではありません。 どの事実を取り上げ、何を省き、どう見出しをつけるかによっても、読者が受け取る印象は変わります。
「虚偽」と「極端な偏り」は違う
今回の研究を読むうえで、区別しておきたいのが次の2つです。
| ニュースの種類 | 特徴 |
|---|---|
| 虚偽ニュース | 内容が誤りであると確認されている |
| 極端に党派的なニュース | 特定の政治的立場に強く偏っているが、明確な虚偽とは確認されていない |
ここで大切なのは、「虚偽と確認されていない=正確で公平」とは限らないことです。ただし、特定の立場を持つ記事が、すべて誤情報というわけでもありません。主張の方向性と、根拠の確かさを分けて読む必要があります。
同じ出来事でも、見せ方で印象が変わる
たとえば、ある自治体の新制度について、次の2つがわかっているとします。
- 利用者へのアンケートでは、満足したという回答が多かった
- 制度の運営費は、当初の予算を上回った
これは説明のための架空例ですが、どちらを取り上げるかで、見出しは大きく変わります。


どちらも、示された事実とは矛盾しません。それでも、一方だけを読めば「よい制度だ」、もう一方だけなら「問題のある制度だ」と感じるかもしれません。
この例自体が極端な党派性を示すわけではありませんが、事実の一部だけでも、全体への印象を左右しうることはイメージできるでしょう。
支持する側に都合のよいニュースを、どう判断している?
自分が支持する側に有利なニュースにも、不利なニュースと同じ厳しさで根拠を求めているでしょうか。 今回の研究で注目された「党派性」は、この問いを考える手がかりになります。
支持政党への思い入れと、ニュースの受け取り方
党派性とは、ここでは特定の政党を支持し、その側に帰属しているという意識を指します。
著者らは、強く固定化した支持政党への思い入れが、高齢者の極端に党派的なニュースへの関与に関係していると論じています。デジタル知識だけでなく、政治的な関心や支持する立場にも目を向ける必要があるという指摘です。出典:Lyonsら(2024)の論文要旨
ただし、「支持政党への思い入れが原因で、偏ったニュースを読むようになった」と、因果関係まで確定したわけではありません。
「納得できる理由」と「正確さの根拠」を分ける
たとえば、自分が応援する政治家を評価する記事を読んだとき、「やっぱり、この人は信頼できる」と感じたとします。
その納得は、記事に十分な根拠があったからでしょうか。それとも、もともとの自分の評価と一致していたからでしょうか。



苦手な政治家がほめられていたら『根拠は?』と思うのに、応援している人だと、そのまま納得しちゃうかも。



そんなときは、納得した理由を確かめてみよう。『自分の考えと合う』ことと、『裏付けがある』ことは、分けて考えたいね。
応援する立場を持つことと、その立場に有利な主張を無条件で受け入れることは、別です。
日本や30代への応用は「振り返る問い」として
今回の研究は、米国の政治ニュースと年齢の関係を扱っています。政治制度や情報環境が異なる日本、あるいは30代の読者に、同じ傾向がそのまま当てはまるとは言えません。
それでも、「自分に都合のよい情報にも、同じ基準で根拠を求めているか?」という問いは、自分の読み方を振り返るために使えます。
情報を共有する前に、確認したい3つのこと
ここからは、研究を踏まえた実践上の提案です。今回の研究で効果が検証された対策ではありませんが、ニュースを読む・共有する前の確認に取り入れてみてください。
① 見出しだけで判断せず、本文と元の情報源を見る
気になるニュースを見つけたら、まず本文を開きましょう。見出しでは省略されている条件や、対象となる時期が書かれていることがあります。
そのうえで、記事が根拠にしている調査、統計、発言の記録などを確認します。たとえば「調査で判明」と書かれていたら、誰が、いつ、誰を対象に調べたのかを見ると、結果の受け取り方が変わるかもしれません。
元の情報が見つからない場合は、結論を急がず、共有を保留する選択もできます。
② 確認できる事実と、書き手の評価を分ける
記事の中で、数字や発言として確認できる部分と、書き手が意味づけしている部分を分けてみましょう。
先ほどの自治体の例なら、「運営費が予算を上回った」は確認可能な事実です。一方、「だから制度は失敗だ」は評価に当たります。その評価が妥当かを考えるには、超過の理由や、制度によって得られた成果も必要です。
評価を読んだら、「それを支える事実は何か」を探す。 根拠が結論を十分に支えているか、立ち止まって確認してみてください。
③ 相手が逆でも、同じ根拠で納得するか考える
最後に、記事に登場する政党や政治家を、反対の立場の相手に置き換えてみます。
「同じことを、自分が支持していない側がしていても評価するだろうか?」
入れ替えた途端に「もっと詳しい説明が必要だ」と感じたら、その説明は、元の記事でも確かめたい点です。
もちろん、過去の経緯や状況が違えば、評価が変わることはあります。ここで点検したいのは、相手によって、求める証拠の厳しさまで変わっていないかということです。


すべての記事を詳しく調べるのが難しければ、まずは誰かに共有したくなった記事で、この3つを試してみましょう。
まとめ|「納得した」ときこそ、根拠を確かめる
今回の米国の研究が問いかけるのは、ニュースを見抜く力だけでなく、自分がどんな情報に引き寄せられているかにも目を向けることです。
明らかな嘘に注意していても、支持する側に都合のよい切り取りには気づきにくいかもしれません。「自分の考えに合う」という感覚だけでは、その情報の正確さは判断できません。
次に「やっぱりそうだ」と感じるニュースを見つけたら、共有する前に本文と根拠を確かめてみてください。納得した情報にも、疑わしく感じた情報と同じように根拠を求める。 その姿勢を、日々の情報判断に取り入れていきましょう。
参考文献
- Lyons, B., Montgomery, J. M., & Reifler, J. (2024). Partisanship and Older Americans’ Engagement with Dubious Political News. Public Opinion Quarterly, 88(3), 962–990.
論文掲載ページ(DOI) / ワシントン大学掲載の論文要旨
