「『勉強した気』は錯覚だった——ハイライトと再読の科学的真実

「だめな学習法」という文字が背景に大きく描かれた横長イラスト。左側には本を開いて困った表情をするまなぶくん(メガネの男性キャラ)。右側には白衣を着た薬剤師うさぎのみどりんが優しく説明している。背景にはハイライトや再読を示す「禁止マーク」が描かれ、非効率な学習法をテーマにしたデザイン。

【PR】本記事にはアフィリエイト広告が含まれます。
※この記事には、気に入って紹介している商品のリンクが含まれています。ご購入で収益が発生することがありますが、内容は正直に書いています
🌱

まなぶくん

みどりん、昨日テスト勉強で3時間もかけてノートにハイライト引いてさ、2回も読み直したのに、本番では…ほとんど思い出せなかったんだよぉ……

みどりん

それ、心理学的には“学んだ気になってるだけ”って呼ばれる現象なんだよ。実は2013年に発表された大規模研究でも、“ハイライト”や“再読”は学習効果が低いって結論が出てるんだ

まなぶくん

えっ、科学的に“意味なかった”ってこと!?

ノートを読み直したり、色ペンで重要そうなところを目立たせたり——
「これが自分のスタイルだから」と信じて続けている勉強法。
でも、それが科学的には“効果がほとんどない”方法だったとしたら…?

この記事では、教育心理学・学習科学の論文をもとに、
ハイライト・再読・学習スタイルといった間違った学習法の落とし穴と、
なぜ人はそれを信じてしまうのか?という「学びの錯覚」の正体を解き明かします。

📚 この記事でわかること

  • なぜハイライトや再読では記憶に残らないのか(流暢性の錯覚)
  • 「学習スタイルに合わせた勉強」の真実
  • 科学的に証明された「効果のない学習法」
  • 薬学生・医療職にも関係する「知識を実務に活かす学習の原則」
目次

「ハイライトの罠」と“覚えた気”の錯覚

まなぶくん

昨日ね、薬理学の復習で3時間かけてノートにハイライト引きまくったんだよ。でも、今日ちょっと見返したら…全然覚えてなくてさ…

みどりん

それ、“学んだ気になってただけ”ってやつだね。心理学でも『流暢性の錯覚』って呼ばれてる現象だよ

🧠 「流暢性の錯覚」ってなに?

「スラスラ読めた」「目立ってるところは覚えてるはず」と感じると、脳は“理解した”“覚えた”と錯覚してしまう。これが「流暢性の錯覚」です。

みどりん

“見やすさ”と“思い出せるか”は別なんだよ。
脳は『ピンク色で目立ってる』=『理解した』と勝手に判断しちゃうから、覚えた気になっちゃうの

この錯覚の影響を調べた実験があります。📚 Kornell & Bjork (2008)

学生に画家の絵を見せて「様式」を学ばせる実験で、2つの学習方法を比較:

  • 🎨 集中学習(同じ画家の作品を連続で見る) → スラスラ見えて「わかった気」に
  • 🧠 分散学習(違う画家を交互に見る) → 少し混乱するが、あとで思い出せる率が高い!

結果:

  • 学習者の83%が「集中学習の方が効果的」と主観的に評価
  • でも実際のテストでは、85%が分散学習の方が正答率が高かった

つまり、「簡単に感じた=覚えた」は完全に錯覚だったんです。

✏️ なぜハイライトが効かないのか?

まなぶくん

でも、学校でも“重要なとこは線引け”って言われるよね?

みどりん

実は、心理学では“ハイライトは効果が低い”って公式に判定されてるんだよ

📕 Dunlosky et al. (2013) による学習法の大規模レビューでは、10種類の学習テクニックを分析。その中で「ハイライト」「再読」などは“低有用性”と評価されました。

  • 理由:ハイライトや再読は、学生の成績を一貫して向上させないことが多い
  • それでも、多くの学生がこれらを多用しているという現実がある
  • 結果として、“覚えた気”だけが残り、実際の記憶には残りにくい
みどりん

つまりね、ハイライトや再読って“努力してる気”になるけど、実はほとんど効果ない。むしろ、勉強した気になって満足してしまうのが最大の問題なんだ

まなぶくん

うそぉ……じゃあ俺の3時間って……

みどりん

安心して!代わりに“本当に記憶に残る方法”があるから、それを次で教えるね

「再読の罠」と“学習スタイル神話”の真実

🔁 再読も“やってる気”を強化するだけだった

まなぶくん

じゃあ…読み直しは? 何回も復習って効果ありそうじゃない?

みどりん

それもね、心理学的には“低有用性”の代表なんだよ

再読は、Dunlosky et al. (2013) の大規模レビュー(出典)で効果が低いと明言されています。

なぜ再読が低有用性なのか?

あなたの検証内容を反映して、科学的な理由を整理すると…

✖ ①「スラスラ読める=理解した」という錯覚を生む

論文では“錯覚”という語は使われていませんが、
多くの学生が再読に頼っているにもかかわらず
成績は向上しないという結果は、明らかにメタ認知の誤り(学習の錯覚)を示唆しています。

再読は処理が軽く、流暢に感じるため、

読めている=「理解した!覚えた!

と誤解しやすい認知メカニズムと強く一致します。

✖ ② 「思い出す力(retrieval)」が鍛えられない

レビューでは再読の代わりに
練習テストが高有用性とされています。

理由は、練習テストが

  • 記憶の検索(retrieval)
  • 情報の再構築(reconstruction)
  • 深い精緻化処理

を伴うから。

一方再読は、見た目は勉強しているように見えても…

情報を「引き出して使う」プロセスが一切ないため、本番に弱いのです。

✖ ③ 長期保持や応用力に結びつかない

レビューでは再読の利益が

  • 記憶(memory)
  • 問題解決(problem solving)
  • 理解(comprehension)

といった 基準課題に一般化しない と示されています。

つまり、「読んだ直後はわかるけど、使えない」という学習の弱点を持っています。

これはまさに、

受動的で浅い処理 → 長期保持が弱い

という認知心理学の基本原理そのもの。

🎭 「学習スタイル神話」は科学的に否定されている

まなぶくん

じゃあ“自分に合ったやり方を見つける”はダメなの?

みどりん

うん…“学習スタイル”は効果があるという証拠はほぼないって結論が出てるんだ

📚 Pashler et al. (2009) の大規模レビュー(出典)では、

「学習スタイルに合わせた指導が効果を高めるという証拠は、ほぼ存在しない」と結論付けています。

学習スタイル(視覚型・聴覚型など)と指導法の効果が
本当に連動するのであれば、

  • 視覚型 → 視覚教材
  • 聴覚型 → 音声教材

で成績が上がるはず。

しかし、レビューが要求する“決定的な証拠”(スタイル×教材の交互作用パターン)はほぼ見つからなかったと明言されています。

🎯 本当に大切なのは「内容に合った方法」を選ぶこと

学習スタイルは無関係でも、教材の性質に適した学習法は確かに存在します。

Pashlerらは例として:

  • ライティング → 口頭でのフィードバックが有効
  • 幾何学 → 視覚・空間的な教材が必須

と述べています。

これは、“人に合わせる”のではなく“内容に合わせる”という本質を示しています。

📝 小まとめ

テーマ科学的にわかったこと
再読受動的で低有用性。成績が向上しない。錯覚を生む。
学習スタイル神話効果の証拠ほぼゼロ。
本当に重要なこと“内容に最適な方法”を選ぶことが学習効率を決める。
まなぶくん

なるほど…“好きだから”とか“自分は◯◯型だから”じゃダメなのか…

みどりん

うん。でも安心して。“本当に記憶に残る方法”はこれから紹介するよ!

本当に記憶に残る学習法 —— 想起練習 × 間隔反復

まなぶくん

“再読はダメ”、“学習スタイルも根拠なし”…じゃあ、何をすればいいの?

みどりん

答えはね、“思い出すこと”と“時間を空けること”だよ。これが科学的に一番強いの

🧠 ① 想起練習——“思い出す”こと自体が学習になる

みどりん

まずは 想起練習。これは“問題を解いて思い出す”っていう能動的な学習のことだよ

📚 Roediger & Karpicke(2006) のレビューによると:

  • 教材を“繰り返し読む”ことは、学習直後のテストには有利
  • しかし時間をおいたテストでは、“思い出す練習”をした方が圧倒的に記憶が残りやすい

つまり……

✏️ A:再読 → 直後はできる気になる
🧠 B:想起練習 → 日が経つほど記憶が強く残る

という逆転現象が起きます。

まなぶくん

なるほど…“読む”より“思い出す”の方が、時間が経ったあとに強いんだね!

みどりん

そう。テスト効果って呼ばれて、教育心理学で最も確立された現象のひとつなんだ

🕒 ② 間隔反復(Spacing effect)——“時間を空けると”記憶は強く残る

みどりん

次に大事なのが 間隔反復。つまり“復習の間に時間を置く”という方法だよ

古典的なエビングハウスの研究以来、現代の研究でも繰り返し示されています。

🔍 ポイントは:

  • 同じ日や連続で詰め込むより
  • 時間を空けて復習する方が、記憶の保持ははるかに高い

これは「前に学んだ内容を少し忘れかけてから復習する」ことで、脳にちょうどよい負荷がかかるため。

まなぶくん

“忘れそう”がむしろ良いってこと?

みどりん

そうなの。“忘却”は悪じゃなくて、むしろ記憶を強くするチャンスなんだよ

🔥 ③ 望ましい困難——あえて“ちょっと難しい”が最強

みどりん

この2つの原理をまとめて説明する考え方が 望ましい困難だよ

これは教育心理学者 Bjork が提唱した理論で、

短期的には難しく感じるけど、長期的な学習効果は高い行動を“敢えて”取り入れるべきというもの。

例えば:

  • すぐ読める → 楽だけど残らない
  • 思い出す → 少し難しいけど、長く残る
  • 連続で復習 → やった気になるけど弱い
  • 時間を空ける → ちょっとしんどいけど最も強い

まさに “努力感”と“効果”が反比例する世界 が学習なんです。

🔍 小まとめ:本当に記憶が残るのは「思い出す × 時間を空ける」

学習法効果
再読直後だけ強い/長期で弱い
想起練習長期保持が最強
間隔反復時間を空けるほど強い
望ましい困難少し難しい方が定着
まなぶくん

勉強って、“楽な方”が良いとは限らないんだね…!

みどりん

そう。脳に優しいより、脳が“がんばらなきゃ”と思う方が長く残るの。これが科学的に証明されてるんだよ

次はいよいよ——
📘 これらの原理を“どう実践するか”を具体的に解説します!

実践ガイド —— 1日・1週間・1ヶ月で記憶を固める方法

まなぶくん

理論はすごくわかった!でも…実際にどうやって勉強すれば記憶が残るの?

みどりん

ここからは 今日から使える科学的な復習プランを紹介するよ!

🎯 STEP1:その日のうちの“5分”を使う(Day0 → Day1)

1. 勉強直後に「3つ質問を作る」

  • ノートを閉じて、自分でクイズ化
    例)「作用機序」「副作用」「禁忌」など

これは 想起練習(retrieval practice)の準備

2. 翌日(1日後)に“ノーヒントで答える”

みどりん

この“見る前に思い出す”が、一番の脳トレなんだよ

  • ノートは見ない
  • 作った質問に答える
  • 間違えたら答え確認 → 再度思い出す

💡 1日後が最適な理由
忘却が始まり「望ましい困難」が最も働くから。

  • 1週間記憶したい → 約1日後
  • 1ヶ月記憶したい → 約1週間後

👉 つまり “1日後の復習” は理論的にも実証的にもベスト。

📅 STEP2:1週間後に“2回目の想起”で長期記憶へ

1週間後は、完全に忘れかけています。

まなぶくん

1週間後ってもう覚えてない気がする…

みどりん

そこがポイント!“ちょっと難しい”が一番記憶に残るんだよ

🔥 1週間後のやること

  • ノーヒントで昨日の3問に答える
  • 書き出せれば完璧
  • 間違えた部分は “最重要項目”フォルダ

ここでの想起は 間隔反復(spacing) の黄金サイクル。

📆 STEP3:1ヶ月後の“最終テスト”で定着が完成

1ヶ月後は 長期記憶を半永久レベルに切り替える区間。

🔁 1ヶ月後のやること

  • 何も見ずに回答
  • 正解 → 完全定着
  • 不正解 → 再び1週間サイクルへ戻す
みどりん

記憶は“再構築”されるほど強くなるんだよ

💊 薬学生・医療職に最適化したリアル例

みどりん

薬学の勉強にそのまま使えるように例を作ったよ!

📘 例:β遮断薬(作用機序・禁忌・副作用)

Day 0(当日)

  • 3問作る
  • 一度ノーヒントで思い出す

Day 1(1日後)

  • ノーヒントで回答
  • ミスしたら再テスト

Day 7(1週間後)

  • 再度想起
  • 間違えた問題だけ1週間後に回す

Day 30(1ヶ月後)

  • 最終テスト
  • できたら「実務実習前」「国試前」にもう一度やると完璧

よくある失敗パターン(最初に知っておくと失敗しない)

  • × 1日後に“答えを見ながら”確認 → 想起練習ではない
  • × 1週間後の復習を忘れる → カレンダー・リマインダー必須
  • × わからなかった項目を放置 → “最重要フォルダ”へ再投入
まなぶくん

これ全部やりそう…

みどりん

だから最初に“復習日をスケジュール化”するのが大事なの!

📱 デジタルツールでも自動化できる

  • Anki:完全自動で間隔反復
  • Quizlet:フラッシュカード作成+間隔復習
  • Notion:自分で復習日を管理

ツールの目的はただ一つ:👉 “復習日を忘れないこと”

🧩 まとめ:科学が示す「3サイクル復習法」

タイミング行動
当日質問を3つ作る
1日後ノーヒント想起
1週間後2回目の想起
1ヶ月後最終テスト

🌱 今日からできる最速ロードマップ

✔ 今日:3つ質問を作る
✔ 明日:ノーヒントで答える
✔ 来週:もう一度思い出す
✔ 来月:総復習で完了

まなぶくん

めっちゃシンプル!続けられそう!

みどりん

そう。“楽な勉強”じゃなくて“残る勉強”に変えるだけで記憶力は劇的に伸びるよ

🧵 まとめ: ‘やってる気’ に騙されない。科学が教える、ダメな学習法の正体

みどりん

今日の内容をまとめるよ。キーワードは “錯覚に騙されない” だよ

❌ 1. ハイライトの罠——『覚えた気』はただの錯覚

  • ハイライトは “見やすいだけ”
  • 脳は「目立っている=理解した」と勘違いする(流暢性の錯覚)
  • Dunlosky et al. (2013) によると、ハイライトは “低有用性”

👉 記憶にはほぼ残らないのに、安心感だけは強い。

❌ 2. 再読の罠——スラスラ読める=理解ではない

  • 再読は処理が軽く “わかった気” が最大化
  • でも 検索を鍛えないため、本番に弱い
  • 長期保持・応用力・問題解決力に一般化しない

👉 「読んだ量=賢くなった量」ではない。

❌ 3. “学習スタイル神話”——科学的に根拠ゼロ

  • 視覚型/聴覚型に合わせても成績は変わらない
  • Pashler et al. (2009) の大規模レビューで否定
  • 必要なのは 人に合わせることではなく“内容に合わせること”

👉 「自分は◯◯型だから覚えられない」はもう卒業。

みどりん

“記憶に残る学習”はとてもシンプルだよ

◎ 想起練習(思い出す)

  • ノートを閉じて思い出す → 脳の回路が強くつながる
  • Roediger & Karpicke(2006) でも、長期保持で圧倒的に強い

◎ 間隔反復(時間を空ける)

  • 1日後/1週間後/1ヶ月後のサイクルで復習
  • 忘れかけたところで復習するのがベスト(望ましい困難)
まなぶくん

なるほど…俺、ずっと“気持ちよくなる勉強”してたんだ

みどりん

今日から “残る勉強” に変えていこうね。学力は、やり方しだいでちゃんと伸びるよ

📕 科学的根拠に基づく「最高の勉強法」——もっと知りたい方へ

この記事で紹介した「ダメな学習法」「本当に記憶に残る学習原則」について、
さらに詳しく・体系的に学びたい方にはこの本がおすすめです。

【PR】アフィリエイト広告

この一冊では、

  • ハイライトや再読がなぜ効果が薄いのか
  • 実証研究から本当に効果のある勉強法

といった内容が、豊富な科学的データや論文とともに、わかりやすく解説されています。

本記事で学んだ科学的学習法をさらに深く・実践的に理解したい方には、間違いなく役立つ一冊です。

※今回の記事では“効果の低い学習法”を中心に紹介しました。
“本当に記憶に残る学習法”の具体的な実践方法は、今後別の記事で詳しく解説予定です。

📝 ご注意ください
・本記事は、信頼性の高い文献や論文をもとに専門知識をわかりやすく整理した一般情報です。
・内容には十分配慮しておりますが、個々の状況や悩みには専門家へのご相談をおすすめします。
・内容に誤りやお気づきの点がございましたら、そっとお知らせいただけると幸いです。

参考文献

  • Kornell, N. & Bjork, R. A. (2008). Learning Concepts and Categories: Is Spacing the “Enemy of Induction”? Psychological Science, 19(6), 585-592.
    PDFリンク
  • Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58.
     公式ページ(Sage Journals)
  • Pashler, H., McDaniel, M., Rohrer, D., & Bjork, R. (2009). Learning Styles: Concepts and Evidence. Psychological Science in the Public Interest, 9(3), 105-119.
    DOIリンク
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). The Power of Testing Memory: Basic Research and Implications for Educational Practice. Perspectives on Psychological Science, 1(3), 181–210.
     公式ノートまとめ(英語解説/引用抜粋)
  • Bjork, R. A. & Bjork, E. L. (1994). Desirable Difficulties in Theory and Practice.
    解説記事(Durrington Research School)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次