
今年こそ運動を続けるぞ!…って思ってたのに、もう三日坊主だよ…



それ、“やる気”のせいじゃなくて、方法の問題かもしれないよ



え、方法?根性じゃダメなの?



心理学の研究でね、“ポジティブに目標を思い描くだけ”だと、意外と続きにくいって分かってるの
実は、やる気や根性だけでは長く続かないのが人間の自然な傾向です。
そこで注目されているのがWOOP(ウープ)という目標達成法。
これは米国の心理学者ガブリエル・エッティンゲン博士らが提唱したもので、運動・食生活・学習・人間関係など、さまざまな分野の研究で効果が報告されています。
この記事では、WOOPの基本と理論的背景、そして世界各国の実証研究をもとに、あなたの目標を日常の行動につなげる方法をご紹介します。
医療や治療ではなく、日常生活の質を高めるための心理的アプローチとして参考にしてみてください。
この記事でわかること
- WOOPとは何か(4つのステップと心理学的背景)
- 世界の研究で示されたWOOPの効果
- 今日からできるWOOPのやり方(具体例付き)
- 続けるための工夫と習慣化のコツ
- 医療行為ではなく、日常生活に活かすための安全な活用方法
目標が続かないのは“意志の弱さ”ではなく方法の問題
「続かないのは、自分の意志が弱いから…」
そんなふうに思い込んでしまう人は多いですよね。
でも、心理学では「続けられない」のは性格や根性だけの問題ではないことが分かっています。
多くの人は目標を立てるとき、ワクワクしながら理想のゴールやポジティブな未来ばかりを思い描きがちです。
新しい手帳を買ったらやる気満々。でも三日坊主で終わって「やっぱり自分はダメだ」と落ち込む…。
これ、実は誰でも陥る“脳のわな”なんです。



あるある…!手帳の最初の3ページだけキレイで、あとは真っ白だよ…



それも自然な脳の反応。自分を責める必要はないの
なぜポジティブ思考だけでは続かないのか?
人間の脳は、達成した未来をリアルに想像すると、まるでそれを手に入れたような錯覚(小さな満足感)を得ます。
その結果、「もういいかな」と無意識に行動へのエネルギーが減ってしまう。
これは脳科学の実験でも確かめられている、ごく自然な反応です。
だから「やる気がなくなった=自分はダメ」と責めなくてOK。
問題は“気持ち”ではなく“方法”にあるんです。
続けるためには“障害”への備えがカギ
多くの行動科学研究が示しているのは、「理想の未来」と「現実の障害」をセットで具体的にイメージし、その対策をあらかじめ立てておくことの重要性です。
ここで登場するのが、WOOP(ウープ)という心理的アプローチ。
WOOPは願望(Wish)、結果(Outcome)、障害(Obstacle)、計画(Plan)の4ステップで構成され、
現実に合わせた目標達成を後押しします。



そっか…続かないのって意志の問題じゃないんだ



そう。方法を変えれば、誰でも“続けやすく”できるのよ
WOOPとは?現実的な行動を引き出す4ステップ目標達成法
WOOP(ウープ)は、心理学者ガブリエル・エッティンゲン博士らが提唱した「願望と現実のギャップを埋めるための思考法」です。
運動、食生活、学習、人間関係など幅広い分野での研究が行われ、短期間の行動変化から長期的な習慣化まで応用可能とされています。
4つのステップで行動が続きやすくなる


WOOPは、次の4ステップで構成されています。
- Wish(願望)
達成したいことや望む習慣を明確にします。
例:「週3回のウォーキングを続けたい」 - Outcome(結果)
それが達成されたときの良い結果を具体的に想像します。
例:「体力がついて疲れにくくなる」「気分が前向きになる」 - Obstacle(障害)
目標達成を妨げる内的・外的な障害を洗い出します。
例:「雨の日はやる気が出ない」「仕事が遅くなって疲れてしまう」 - Plan(計画)
障害が起きたときにどう行動するか、if-then形式で決めます。
例:「もし雨が降ったら、家でストレッチを20分する」
👉 if-then形式(イフゼン)の詳しいやり方はこちら



へえ、最初から障害を考えるのって新鮮だな



そうなの。理想だけじゃなく、現実の壁まで想定することで“続ける力”が高まるのよ
WOOPの理論的背景:MCII
WOOPの土台になっているのが、Mental Contrasting with Implementation Intentions(MCII)という理論です。
これは「メンタル・コントラスト」(理想と現実を対比する)と、「実行意図」(if-then計画)を組み合わせた方法。
- 理想と現実の差を認識することで、必要な行動が明確になる
- 具体的な行動計画を事前に決めることで、障害が発生しても自動的に行動を切り替えやすくなる
このアプローチは多くの実証研究で検証されており、日常生活のさまざまな目標に活用できます。
科学的エビデンスが示すWOOPの効果
WOOPは理論だけでなく、世界各国の研究で効果が検証されています。
ここでは、健康行動の改善と、学習・介護・関係性の改善という2つの観点からご紹介します。
※以下はすべて日常生活での行動変化に関する研究であり、医療や治療を目的としたものではありません。
健康行動の改善:運動・食生活・飲酒
- 運動習慣向上(2009年)
Stadlerらの研究(Am J Prev Med)では、成人女性を対象に、情報提供だけのグループと、情報+MCII(WOOP基盤)のグループを比較。
その結果、WOOPを取り入れたグループは運動の実施率と継続率が有意に向上しました(出典)。 - 食生活改善(2010年)
同じくStadlerらの研究では、果物と野菜の摂取量について2年間追跡。
WOOP群は摂取量の増加が長期間維持され、行動変容が定着しやすいことが示されました(出典)。 - 飲酒行動改善(2025年)
米国の大学生を対象に、学生コーチがWOOPを用いた短時間介入を実施。
シャムWOOP(見かけだけの形)と比較し、1〜2か月後のフォローで重度飲酒日数が有意に減少しました(出典)。
低コストで実施できる点も特徴です。



運動も食生活も飲酒まで…健康系に幅広く効くんだ!



そう、しかも短期から長期まで、いろんなスパンで効果が見られているのよ
学習・介護・関係性の改善
- 学習行動(2017年)
麻酔科レジデントを対象に、目標設定のみのグループとWOOPグループを比較。
WOOP群は目標に沿った学習時間が有意に増加しました(出典)。 - 介護者の心理的ウェルビーイング(2021年)
認知症患者の配偶者を対象にWOOP介入を行った研究では、ストレス減少や生活の質の改善、ポジティブ感情の増加が報告されました(出典)。



健康以外にも、勉強などにも効果があるんだ!



そうなの。WOOPの良いところは、分野を問わず応用できるところなのよ
WOOPのやり方:今日からできる4ステップ


WOOPは、特別な道具や長時間の準備がいらないシンプルな方法です。
ここでは、今日からでも始められる4つのステップを、わかりやすい例と一緒にご紹介します。
※以下は日常生活の目標達成をサポートする心理的アプローチであり、医療や治療を目的としたものではありません。
ステップ1:Wish(願望)を明確にする
まずは、あなたが本当に達成したいことを1つ選びます。
ポイントは「現実的に可能で、努力すれば達成できるレベル」にすること。
例
- 週3回ウォーキングをする
- 夜は30分早く寝る
- 毎日果物を1品食べる



つい“大きな目標”を立てちゃうけど…



最初は小さな願望から始めるほうが、成功体験を積みやすいのよ
ステップ2:Outcome(結果)を具体的に描く
願望が叶ったときに得られる良い結果を、できるだけ具体的に想像します。
感情や生活の変化までイメージすると効果的です。
例
- 体力がついて階段がラクになる
- 朝スッキリ目覚められる
- 健康診断で数値が改善する可能性を感じる



“気分がいい”とか、そういうのも入れていいの?



もちろん!感情の変化も立派な成果よ
ステップ3:Obstacle(障害)を洗い出す
次に、その願望を妨げる内的・外的な障害を挙げます。
ここで正直になることが、後の計画に直結します。
例
- 雨の日は外に出たくない
- 仕事や家事で疲れてしまう
- 面倒くさくなってスマホを触ってしまう



“やる気が出ない”とかも障害になるの?



そう。感情や習慣も立派な障害だから、遠慮せず書き出してね
ステップ4:Plan(計画)をif-then形式で立てる
最後に、障害が起きたときの対策を「もし○○なら→□□する」という形で決めます。
これを実行意図(Implementation Intention)と呼びます。
例
- もし雨が降ったら → 家でストレッチを20分する
- もし疲れて帰宅したら → 5分だけ筋トレしてみる
- もし夜更かししそうになったら → スマホを別の部屋に置く



こうやって事前に決めておけば、迷わず行動できそう!



そうなの。あとは小さな成功を積み重ねれば自然と続くわ
この4ステップを1回書き出すだけでも、行動のハードルはぐっと下がります。
WOOPを習慣化して効果を高める3つのコツ
WOOPは一度やって終わりではなく、継続して使うことで行動が安定しやすくなる心理的アプローチです。
ここでは、日常生活に無理なく組み込み、長く続けるための3つのコツをご紹介します。
※これは医療や治療ではなく、生活改善や自己管理のための参考情報です。
1. タイミングを決めてルーティン化する
毎日・毎週のWOOPタイムを決めることで、思考と行動が習慣になります。
おすすめは、朝の準備時間や寝る前のリラックスタイムなど、気持ちを切り替えやすい時間帯。
例
- 朝のコーヒータイムにWOOPをノートに書く
- 1日の終わりに、今日の行動を振り返りながら翌日のWOOPを設定



寝る前にやれば、次の日の行動がスムーズになりそう!



そう、寝る前の準備は翌日のエネルギーにもつながるのよ
2. 小さな目標から積み重ねる
最初から大きな目標に挑むと、障害に直面したときに諦めやすくなります。
まずは小さな願望で成功体験を積み、その後にステップアップするのがおすすめです。
例
- 「毎日30分運動」ではなく「まずは5分ストレッチ」
- 「毎日自炊」ではなく「週2回から始める」



5分ならやれそう…って思えるのが大事なんだね



そう、続けられる自信を少しずつ育てるのがポイントよ
3. 可視化してモチベーションを保つ
WOOPの内容や達成状況を見える化すると、達成感が積み重なります。
ノート、付箋、スマホアプリなど、自分が使いやすいツールでOK。
例
- カレンダーに達成日をマーク
- スマホのホーム画面にWOOPのメモを表示
- 達成したらシールを貼る



マークが増えると“もっと続けたい”って気持ちになる!



そうやって自分をポジティブに刺激するのも大事なの
この3つの工夫を取り入れれば、WOOPは一時的なモチベーションではなく、日常に根付く習慣になります。


まとめ:WOOPで未来の自分を少しずつ変えていこう
WOOPは、願望(Wish)、結果(Outcome)、障害(Obstacle)、計画(Plan)の4ステップで、
理想と現実のギャップを埋めるシンプルな心理的アプローチです。
これまでにご紹介した研究からも、運動・食生活・飲酒・学習・介護など、
日常のさまざまな分野でWOOPが行動の継続を後押ししていることが分かっています。
今日からできる第一歩
- 大きな目標ではなく、1つの小さな願望を決める
- 良い結果と障害を具体的に書き出す
- 障害が出たときのif-then計画を立てる



よし、まずは“週2回の夜ストレッチ”でWOOPやってみる!



いいね!3日後にもう一度見直せば、続けやすくなるわよ


続けるほど未来が変わる
WOOPは、やる気だけに頼らず、現実的な行動を積み重ねるための“地図”のようなもの。
一歩ずつ進めば、気づいたときに日常の小さな変化が積み重なり、
あなたの生活や気持ちにポジティブな影響をもたらす可能性があります。
このあとすぐに、あなたも紙とペン、またはスマホメモを使って最初のWOOPを書き出してみましょう。
3分あれば、未来へつながる最初の一歩が踏み出せます。
📝 ご注意ください
・本記事は、信頼性の高い文献や論文をもとに専門知識をわかりやすく整理した一般情報です。
・内容には十分配慮しておりますが、個々の状況や悩みには専門家へのご相談をおすすめします。
・内容に誤りやお気づきの点がございましたら、そっとお知らせいただけると幸いです。
参考文献
Stadler, G., Oettingen, G., & Gollwitzer, P. M. (2009). Physical activity in women: Effects of a self-regulation intervention. American Journal of Preventive Medicine, 36(1), 29–34.
https://doi.org/10.1016/j.amepre.2008.09.021
Stadler, G., Oettingen, G., & Gollwitzer, P. M. (2010). Intervention effects of information and self-regulation on eating fruits and vegetables over two years. Health Psychology, 29(3), 274–283.
https://doi.org/10.1037/a0018644
Witkiewitz, K., MacKinnon, D. P., Arciniega, L. T., Reusser, M. M., & Cunningham, J. (2025). WOOP as a brief alcohol intervention led by lay coaches in college settings. Journal of American College Health. Advance online publication. https://nycfoodresearchco.org/wp-content/uploads/2025/01/WOOP-as-a-Brief-Alcohol-Intervention-Led-by-Lay-Coaches-in-College-Settings.pdf
Duckworth, A. L., Kirby, T. A., Gollwitzer, A., & Oettingen, G. (2017). Changing resident physician studying behaviors: A randomized controlled trial of mental contrasting with implementation intentions. Journal of Graduate Medical Education, 9(4), 451–457.
https://doi.org/10.4300/JGME-D-16-00705.1
Johannsen, A., Oettingen, G., & Kappes, A. (2021). A controlled pilot study of the Wish Outcome Obstacle Plan strategy for spouses of persons with early-stage dementia. Health Psychology, 40(5), 303–313.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8893137/